聞き上手

2004年1月24日
よく営業職や管理職などを啓蒙する本などで、聞き上手と云うコトバを良く見かける。
一般に、日本では聞き上手が好まれる。
会話などでは、自分のことを話したがる人が多いので、聞き上手は少ないといわれている。

他の諸外国ではどのようになっているかは、よく知らないが、日本では会話がかみ合わないことを良く感じることがある。

双方が自分のことをわかってもらいたいという気持ちが強く、自分の事情ばかりを強く説明しがちなのである。
これは、自分の置かれている状況に如何に大変であり、困難なことを強いられているとか、または、悲惨な状況からここまで来れたのは自分が頑張ったからだと評価されたいとか、とにかく被害者意識が強いのである。
そのような、被害者として出発している人々にとって、会話とは自身の被害状況を細かく説明する良い機会である。

かくいうわたくしも、営業職としての期間が長く、お客様のところで話をする時に、「それは大変ですね」とか「ご苦労なさったんですね」と云うと決まって嬉しそうに、ある意味得意満面になるのが不思議でしょうがなかった。

言ってみれば、「大変な自分」「苦労している自分」が好きなのである。

女房殿がご亭主に、「アンタはいいわね、会社行ってりゃ好きなことが出来るんだから!」などとヒトコト言えば、「おまえは、オレが会社でどんだけ苦労しているかわかっているのか!」などとやり返すであろう。
反対に「オマエは、おれが会社で苦労している間に三食昼寝つきでいいな」などといえば「ワタシはこれでも毎日大変なのよ!」とやり返される。

日本総苦労人とでも言いたげである。

このような、大変好き、苦労好きな方々の中で、聞き上手は実は簡単である。
とにかく相手に喋らせればよいのである。
あまり聞いていない風だと、関心が無いことがばれるので、時々相槌を打てばよいのである。
そうすると不思議なことに、相手は自分のことをよく分かってくれると錯覚して、喜んでくれる。

わたくしの友人で、とにかく鸚鵡(オウム)返しに話せば、相手は自分に好意を抱くとまで言った人がいる。

「この前、大変なことがあったんだよ」
「この前ですか?」
「うちの会社でね、不祥事みたいなことがあってさ」
「不祥事ですか?」
「そうそう、部長がやっちまったんだよ」
「部長さんが?」
「その部長ってのがさ、好きもんでねぇ」
「ああ、好き物なんですか」
以下ご想像にお任せします。

このように、とにかく相手のことを大して聞いていなくても、日本では会話が成立する。
悲しいかな、そのような人を聞き上手として褒めているのは一体何故なんでしょうね。

周りを見渡して、聞き上手の人を観察するといい。
きっとそれは、寡黙な人で、大したコミュニケーションはしていないと思う。
もしコミュニケーションが出来ているなら、異なった評価のされ方をしていると思うが。

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